MENU

RESEARCH

最近の研究成果

  1. レトロウイルスであるHTLV-1はヒトゲノムDNAへ異所性CTCF結合部位を導入する
  2. DNAプローブと次世代シークエンスを活用した高精度HTLV-1プロウイルス解析法の開発

レトロウイルス潜伏感染のメカニズム解明

ヒトに感染し病気を起こすレトロウイルスにはHIVとHTLVが存在します。本研究室ではこの2つのレトロウイルスHIV、HTLVを研究対象とし、ウイルスの潜伏感染メカニズムの解明を目指しています。

1. HIV(ヒト免疫不全症ウイルスHuman Immunodeficiency Virus)感染症

世界でおよそ3400万人が感染していると推測され、日本でもおよそ2万人がHIVに感染している事が報告されています。現在でも感染者は世界中に拡大しており、早急な対策が必要なウイルス感染症の一つです。

HIV研究の特筆すべき成果である抗レトロウイルス療法の進歩により、先進国ではHIV感染症がコントロール可能な慢性ウイルス感染症になってきました。しかしながら、治療でも感染者からウイルスを完全に取り除く事は極めて難しく、感染者は長期にわたり治療を受け続けなければいけません。その一番の原因は抗ウイルス療法では排除されない潜伏感染細胞の存在と考えられます。

本研究室では、このHIV持続潜伏感染という重要研究課題に取り組み、潜伏感染メカニズムの解明を通じて、HIV感染症の根治へ向けた新規治療標的を見出す事を目指して、研究を行っています。

2. HTLV(ヒトT細胞白血病ウイルスHuman T-cell Leukemia Virus)感染症

HTLV-1は成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)の原因ウイルスであり、世界的におよそ2000万人、日本でもおよそ100万人近い人がHTLV-1に感染していると推測されています。このウイルスは九州・沖縄地方に感染者が多く、熊本も県南部や天草地方を中心に、感染者が多い地域の一つです。HIVと異なり、HTLV感染細胞からのウイルス粒子産生は極めて低く、未治療でも潜伏感染の状態を維持する事で、持続感染を続ける特徴をもったウイルスです。

大部分の感染者は病気を起こさない無症候性キャリアですが、一部の感染者ではATLや慢性炎症性疾患を引き起こす病原性をもっています。本研究室では、ATLに対する新規治療法や発症早期発見が可能となる新規診断法の開発を目指しています。

3. レトロウイルスとヒトゲノム科学との融合的研究

約31億塩基対あるヒトDNAは、我々の生命活動の根源となる遺伝情報が書き込まれています。ヒトゲノムプロジェクト(ヒトゲノムの全塩基を解析するプロジェクト)が2003年に完了し、ヒトDNAの全塩基配列が明らかになってきました。しかしながら、それでヒトの病気の原因が全て明らかになったかというと、いまだに多くの不明な点が残されていると言わざるを得ません。DNAに書き込まれている遺伝情報が、如何にして読み取られ、細胞の中で機能していくのかを理解すること、つまりポストゲノム研究が、次の重要な研究課題と考えられています。その点、レトロウイルスの研究は外来性ウイルスDNAのヒトゲノムへの組み込みの影響を知る事が可能であり、ポストゲノム研究の独特な研究アプローチになり得ると考えられます。

HIVやHTLV-1は約9,000塩基しかなく、約31億塩基あるヒトゲノムと比べると極めて小さいですが、ヒトゲノムに組み込まれることにより、時として宿主であるヒトを死に至らしめるような病原性を発揮します。そのような小さなウイルスがいかにしてヒトの遺伝子制御機構を撹乱し、また利用し、ウイルスの持続的な感染を可能とするのでしょうか?さらに、その結果としてヒトに病原性を発揮するメカニズムについては、現在も不明な点が多く残されています。

これら生命現象やウイルス病原性に関する研究を進めるために、次世代シークエンサーを用いたレトロウイルスの組み込み部位解析やゲノムに組み込まれたレトロウイルスゲノムのエピジェネティックな制御機構、さらにはDNA高次構造や核内局在部位がウイルス遺伝子制御に与える影響等に関して解析を進めたいと考えています。

レトロウイルスのインテグレーションの研究で高い実績を誇る、英国インペリアル大学Bangham教授の研究グループと共同で研究を進めています。また、本研究を進めるのに必要な大型研究機器は、エイズ学研究センターや発生医学研究所の共通機器として完備されています。